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高速道路を走るのはおおよそ好きだ。とりとめのない話なんかしながら、周囲の景色にそれとな
い視線を向ける。とはいえ、走りながらに観光の気分を満足させようとしたところでまず充たされ
ることなどない。時速100km超で浮遊するこちら側のエリアと、観光アイテムを散りばめて整然
と佇むあちら側の静的エリアとの間には異次元の隔絶があって、そのゼリー状の揺らぎは行き
交おうとする意識を断絶する。それでも、高速道路の上には、いろいろな夢や都合があり、予定
が消化され、希望に溢れた笑顔があって悲しみに沈む家族の顔もある。今、おいしい魚を食べ
に行こうとして北陸の港町に向かう車がある。八ヶ岳山麓清里の牧場へイチゴや葡萄を目当て
にドライブする4駆のRVが見える。かつての同僚のお墓参りに向かう年寄りばかり5人が乗り合
わせたホワイトマイカのマークUもいる。そして、まさにこここそが職場、流通の基幹、プロの長
距離便トラックが余裕の走りを見せている。そのすぐ後ろ、親の死に目に間に合うようにと、必死
の運転で追い抜きを掛けるダークグリーンのセダンを見送る。そして、僕たちは、どうしても週日
でなくてはならない用事を一つ済ませた後に、初夏の昇仙峡散歩を楽しむ予定だ。

 

 

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