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トラブル ♯2
ジープニー盗難事故
2003.8.25(月)
この日、私は日本のNGOから来られたIさんという方のODA視察調査に、通訳として同行していた。無事にブラカン州での視察を終え、Iさんと私は、マニラ市内のエルミタ地区で行われる会合に向かおうとした。Philcoaからエルミタへは、途中でジープを乗り換える必要がある。夜7時を過ぎていたので、治安の悪いキアポで乗換えをするのは避けたいと思った私は、Philcoaから乗ったキアポ行きのジープニーを、レクトで降りた。前日の事故のこともあり、急いでいたこともあり、できればそこからマビニ行きのFX(ジープニーとほぼ同じ路線を走る乗り合いタクシー)に乗りたいと思ったが、なかなか来ないので、マビニ行きのジープに乗った。

私たちは並んで座っていた。日本語を話しているので、あきらかに外国人とわかる。Philcoaでジープを乗ったときから私はIさんに、「カバンを切られたり開けられたりしないようにしっかりカバンを抱えてください!」と言い続け、彼のもう片一方の隣に座る人々にもそれとなく注視していた…。
なのに、目的地に近い、エルミタのデルピラール通りを走っているとき…私たちの前に座っていた人が、「今、やられた!」と言ったのである。彼が指差すほうを見ると、Iさんの右(私と隣りあっていなかったほう)のズボンのポケットがナイフで切られ、入れていた小型のデジカメが盗られていた。私が「いつ!?」と叫ぶと、「ペドロ・フィル、すぐ降りた!」とのこと。ペドロフィル通りといえばほんのさっき15秒ほど前に通ったはずの道。「乗ったと思ったらすぐに降りたんだ」と彼。私はジープにーの狭く見えにくい窓から「そろそろ降りるところかな」と外を確認しており、その間はIさんの隣などまったく見ていなかった。Iさん自身もお気づきにならなかったとのこと。

私はマニラに住んでそろそろ半年、訪問は6回目になる。毎日平均6回以上はジープに乗っているが、スリに遭ったことはなかった。目を離したうちにカバンを切られる常套手段や、端に追い詰めてナイフで脅されるという場面を見たりきいたりしたことはあっても、それは、しっかり周りの乗客をチェックし、みすぼらしい服装をしたり、タガログ語を話すようにしたり、貴重品を見せないようにしたり、財布を小分けにしたり、怪しい人と隣り合ってしまった場合は念のため途中で降りたり、追い詰められるような端の座席に座ることを避けたり、カバンをしっかりと抱きかかえたりすることで避けられると思っていた。加えて、私はいつもジーンズなので、まさかズボンを切られるというところまで気が回らなかった。Iさんはゆったりとした綿パンをはいておられたので、切られても気づかなかったのである。

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後日。
幸い、Iさんは旅行保険に入っておられた。保険をおろしてもらうためには「警察の盗難証明書(ポリス・レポート)」を発行してもらう必要がある。事件発生現場にもっとも近い警察に行かねばならないとは聞いていたが、何しろ私も初めての体験で、警察はおろか交番すらどこにあるかわからない。
幸いなことに、NAFCのスタッフの協力で、行くべき警察はUN Avenue沿いにあることがわかった。受付で事情を述べると、右手にある机(部屋ではなくなんだかロビーのようなところ)に案内され、担当官が、まるで博物館行きような、そうとう年季の入ったタイプライターで、私たちの説明に沿ったポリス・レポートを作成してくれた。愛想のいい担当官で、「盗られたのはカメラだけか?ロレックスって書いてやってもいいよ」「いえ、それは違反です。」…「ところで、なんで旅行者なのにタガログ語がしゃべれるの?」「いえ、旅行者は彼で、私は旅行者ではありません、住んでいます。」…「独身かね?」「独身です」…「フィリピンで結婚したいのかね?」「いえ、そんな…。」などなどの会話を交わしながら、無事にレポートが完成。約15分。もっと手続きに時間がかかるものと覚悟していたので、ほっとした。。
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私は自分が毎日平気で(たとえ前日に事故にあっても、まだ性懲りもなく)朝も昼も晩もジープニーに乗っているものだから、実はジープニーは危険な乗り物であるという感覚に疎かった。それゆえ、マニラははじめてのIさんを安易に夜のジープニーに乗せてしまった。先日の事故といい、こちらに来てそろそろ半年が経ち、これまでは自分自身はたいして危険な目に遇ったこともなく、自分でも「注意深く生きている」と思っていたので、多少慣れが出てきているのかもしれないと反省した。
2日も続けて事故に遭ったことが、非常にショックだった。以前、短期滞在のときに白昼のジープニーでのナイフ恐喝を見たときも、私はかなり精神的なショックを受け、その後しばらくは歩くのも怖くて、しばらくはジープニーではドライバー横の助手席にしか座らず、夜はまだ比較的安全な乗り合いタクシーのFXに乗るようにし、外国人だと知られないように夜でもサングラスをかけて歩くほどだった。こちらに来た当初もそうだった。けれども、そのような記憶もだんだん薄れ、加えては、マニラで一番危険とされるクバオやキアポやディビソリア地区を朝晩、日常的に歩く(決して選んで歩いているわけではなく、コミュニティに行くための乗り換え地点として歩いているのだが)ようになり、夜10時を過ぎてジープに乗ることも日常茶飯事となり、12時を回ってから家に帰るのも平気になってしまった。
けれど…ジープは危険な乗り物なのだ、マニラの交通マナーは悪いのだ、気を抜いた瞬間に、犯罪に遭ってしまうのだ、ということを、改めて思い出した。
立て続けに起こったあまりの出来事に、私は動揺し、数日間は、第三の事故が起こるのではないかという錯覚さえ抱いた。
危険はどこにでもある。結局は、苦い経験をして学ぶしかないのだと思う。今回は、事故にせよ盗難にせよ、幸いなことに命に別状はなかったのだから、せめてここから学ぶことしかできないと思った。ジープニーに乗るのをやめるわけにはいかないし、これからも、夜間外出や治安の悪い地区を歩くことは避けられない。だからこそ今後は、「気を抜かない」「慣れを感じない」ということを肝に銘じて生活したいと思う。


        
 

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