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Fence-sitting


活動家時代の記録 ♯10 
エチオピア・ウガンダ訪問 第9日目
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1998年8月11日  

早朝にホテルを出発。ここで、ウガンダとエチオピア以外の国からの参加者とはお別れとなる。バングラデシュ、ドミニカ、ハイチ、インドネシア、そしてアフリカの国々…。朝食後、それぞれの国の言葉でお別れを言った。日本人も他国のメンバーも泣いていた。でもきっとまたすぐに会えると思う。いつもいつも、「もうこれで当分会えないんだ」と思うのだけれど、気がつけば再会の時がすぐに来ている。だから私はあまり寂しいと思うことはない。
もっともこれは、言葉が通じないからかもしれない。言葉があるといろいろな無駄なことを言ってしまうから、余計な感情に邪魔されるのではないかと思う。
バスで30分、アジズアベバ空港に着く。普通の空港は出国者と入国者のカウンターのある場所が違うはずだと思うのだが、この空港は同じらしい。一週間前に出てきた経路をそっくりそのままたどって出発ロビーに着くというしくみだ。どうなっているんだか。そのせいかどうか、出国審査には異様に時間がかかる。カウンターのこちら側からもあちら側からも人が通過する。本当に同じカウンターで出国手続きと入国手続きをやっているのか?だんだん不安になる。エチオピア人のカウンターと外国人のカウンターも分かれていないし。

エチオピアエアラインはやっぱり小さくてなんだか不安定だった。滑走路を歩いていってタラップから乗り込むというしくみ。タラップの前で一瞬ためらい、こんなちゃちな飛行機が本当に飛ぶのだろうか、と心配になってしまう。
天候が悪いのであいかわらずよく揺れる。雲が低い位置まで垂れ下がっているので、離陸したと思ったらもう雲の中だ。エチオピアの大地を見下ろしたいと思っていたのに、何も見えない。機内スクリーンでは「トムとジェリー」をやっていた。ウガンダのエンテベ空港まではわずか2時間。国内線並といえばそうだが、この飛行機ときたら、着陸のアナウンスも表示もないのである。急に地面が近づいてきて、はっとして外をよく見ると地面すれすれ。次の瞬間には「ドーン」という音がする。恐ろしい。シートベルト着用の指示もない。何事もなかったかのようにトムとジェリーが写され続けている。普通、着陸の10分くらい前にはスクリーンを消すものだと思うのだけれど。たとえ国内線でも…。

ウガンダでは、タラップでおり、はるか遠くの建物まで歩く。暑かった。気温は摂氏32度(現地では華氏が一般的)。しかし、雨期のエチオピアとは違い、からっとしていて逆に快適だ。空港内には冷房は効いていないが、たいして気にはならない。ここでの入国審査は、パスポートを出してわずか5秒。驚くほど簡単だった。日本人はビザの要らない国だし、とも思ったが、本当にきちんと見ているのか、気になる。
あっという間に空港を出て、バス乗り場へ。ウガンダのYEHメンバーが太鼓をたたき、歌って迎えてくれていた。伝統的な衣装(腰ミノ)までつけている。花束贈呈までされた。南国の花かと思ったがよく見ると菊そっくりだった。
2台の貸し切りバスに分乗して、ホテルに向かう。ホテルまで何分か、とたずねると、30分と言う人もいれば1時間と答える人もいて、まったく予測できない。これが「ウガンダ時間」である。これから3日間、私たちはこの「ウガンダ時間」に戸惑うことになる。
ウガンダの場合、空港は首都カンパラではなく、ここエンテベにある。エンテベは田舎で、南国の村といった感じだ。空港からカンパラに向かう道路は、舗装されてとてもきれいだった。イギリスの支配下にあった国なので、左車線である。少し走ると湖が見えてくる。日本人メンバーの一人が叫ぶ。「あっ、海!」ウガンダは内陸の国であるということを一瞬忘れる。実はこれが、有名なヴィクトリア湖だった。それにしても、湖とは思えないほど大きい。水平線も、海の色もきれいだ。景色はどこまでも南国風。人家もまばらで、たいていは道路脇に、店と一つになっている。売られているのは農作物。主にバナナ、トウモロコシ、サトウキビ。他にもあるようだけれどよくわからない。豊かそうな印象を受ける。緑と湖と明るい空。これまでエチオピアの鬱屈した天候の中にいたから余計に、ウガンダという国が楽園に見えた。日差しの強さに、皆サングラスをかける。
カンパラ市内に入ると、鉄筋ビルも目立つ。派手な英語の看板が多い。特に目に付くのは、コカコーラとパナソニック。「コカコーラ、400シリング以上でなぜ買うの?(直訳)」というような、ビビットなものばかりだ。コンドームの使用を呼びかける大きな看板もあった。(ウガンダの人口の8%以上はエイズ感染者と言われる。)カンパラ市の中心部は、ニューヨークを思わせるほど活気のあるオフィス街。車の量も多く、ホテルや銀行が整然と並んでいる。イギリスナイズという言葉があるのかどうかわからないが、そんな感じだった。
40分で「ホリデイホテル」に着いて、団体チェックインの手続きを済ませる間、私たちはホテルの庭のテラスで待つことになった。ここはハワイやグアムではないかと思うようなきれいな芝生の上に、白いテーブルと椅子、そしてパラソルがついていた。「ここはどういう国なんだろう」さっそく同じテーブルについた友人と、空港からここまでに見たものについて話し合った。
「ガーナもいい国だったけど、ウガンダはその上いってるんじゃないか?」と、去年ガーナに行ってきたOさん。
「そうだね、本当にこの国に飢餓があるのか?」
「カンパラなんて、ニューヨークそっくりだよ。」
「すごいよな。One wayも多いし。」
「One wayが多いっていうのはどういうことなの?」
と、私はたずねた。
「それだけ道が整備されてるってことだよ。あと、ロータリーも多かったし。」
「車はトヨタ、日産、三菱が多かったね。」「パナソニックの広告もあったよ」
そこへ飲み物が運ばれてきた。おなじみの炭酸飲料の瓶だ。MIRINDAと
ファンタとKRISTとコカコーラとペプシコーラ。MIRINDA、KRISTというのは、日本にも昔あったという炭酸飲料。ウガンダではどこへ行ってもこの5種類を見た。なぜかセブンアップはどこにもない。私の飲んだ透明のMIRINDAはえもいわれぬ味がした。あまり好きにはなれない。KRISTは初めて見たが、セブンアップと同じ、透明なただの炭酸飲料だった。緑のボトルに王冠のマーク。私はこれが一番好きだ。ファンタは、紫色をしていた。グレープのファンタだと思っていたら、イチゴだった。かき氷のイチゴシロップ。あれに炭酸を加え薄めた味といえば説明できる。ファンタといえばオレンジだけだと思っていたが、世の中にはいろんなものがあるなぁ。

その日はウガンダのYEHオフィスを訪問する。ビルの11階にあるのにエレベーターが故障していて、階段で上った。エチオピアよりは空気が濃いので、それほど苦しくはなかったけれど、11階は厳しい。オフィスの窓からカンパラ市内が見渡せた。このビルの中には他には政府の機関や自治体のオフィスが集合しているらしい。
「オフィスをここに持てたことで、YEHという団体の信用が高まりました。」
と、ウガンダYEH代表のフレッド。納得である。
その後、市役所を訪れ、バスでホテルに戻る途中、フレッドが車窓の景色を説明してくれる。イギリス統治時代の遺物が多い。道路の名前にも、チャールズとかジェームズとかいう名前が付いている。
ホテルに戻って、先ほどのテラスで歓迎会が催された。YEHウガンダのメンバーたちの他に、何だかよくわからないが大臣や政府の役員まで出席され、順番に挨拶があった、一番地位の高そうに見えた大臣は、なんと若干26歳だそうだ。若い。YEHの「若さ」を褒め称えるスピーチをしてくれた。なんだか説得力がある! しかし、通訳なしでスピーチを延々1時間きかされるのには閉口した。日が暮れると急に寒くなる。やはり標高1200メートルだ。大きな蚊が飛び回っているのが気になる。ここはウガンダ、マラリア伝播地域。虫よけスプレーと長袖の服で身を守りながら式典が終わった。ウガンダの国歌が斉唱された。短くて簡潔な曲だ。しかも簡単な英語。わかりやすくていい。日本も歌った。その後、GYCのテーマソングを歌い、ケーキをカットした。ケーキとはいっても見た目だけで、実際は乾いたパンケーキのような食べ物。ウガンダのYEHの女性メンバーが大サービスで、また腰ミノをつけてダンスをしてくれた。演歌のようなエチオピア音楽よりもずっと覇気がある。太鼓と笛も出てきた。どこからか現れた子どもたちも上手に踊る。腰の使い方が微妙で、けっこうハードなダンスだ。

星がきれいだ。さすが赤道直下、真上にさそり座が見える。
8時にやっとお開きになり、夕食のため屋内の食堂に移動した。これ以上屋外にいたらマラリアに罹ってしまうところだ。
夕食はビュッフェ形式だった。とは言ってもそのビュッフェのトレイが揃うまでに恐ろしく時間がかかった。さっきから待たされどおしで、みんなイライラしはじめている。アフリカ時間だからこんなもんだろう、と思っているのは私と、アフリカに行ったことのあるごく数人のメンバーとスタッフのみ。食卓に沈黙が流れ、険悪なムード。とりあえずソフトドリンクだけは運ばれてきた。オレンジのMIRINDAにチャレンジしてみた。なんのことはない、オレンジのファンタと同じ味だった。「瓶が汚れているので直接口を付けないでストローで」との警告があった。本当に汚れている。が、ここまで汚れているなら口付けようと付けなかろうと同じでは?ストローで炭酸水を飲むのは、おいしくない。
やっとビュッフェのトレイが揃った。私は一番近いテーブルの一人だったが、みんなかなり苛立っている中で、私たちのようなYEHのメンバーが先に行くことはできなかった。理事の方やスタッフ、大人の参加者が優先だ。こういう状況だから、気を遣えといっても自分のことで精一杯なのかも知れないけれど、だからこそ周りを見なくてはいけない。私と数人のメンバーは、大人の方が済むまで待つことにした。あとで、一緒に待っていた大学生が小声で他のメンバーに注意した。特にTHP理事長がいるのだから!と。
ウガンダのメンバーが、何があったのだ、ときいた。私が説明した。日本人は上下関係を気にするんだよ、と言ったら、彼は「日本はコリアと同じ宗教か?」と尋ねた。たぶん儒教のことだろう。違うけれども影響は受けている、と答えた。

その日は部屋に戻って、順番にシャワーを浴びてすぐ寝た。誰も彼もが疲れていた。このホテルでは、ちゃんとお湯が出た。何よりも蚊が怖いので、蚊取り線香を二カ所に炊いた。部屋のテレビでCNNを見た。大使館の爆破事件の報道はなかった。



つづく


        
 

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